”干渉”が行き過ぎてしまうと相手にとってストレスになるということは認めなければいけません。
何故なら、相手が思っていることに対して必ずしも共感出来るとは限らないですし、その人の価値観を無理やり押し付けることになるからです。
そして、私たちを困惑させる言葉があります。
それは「あなたのためを思って~」です。
「ためを思って」という言葉は、一見親切心として受け取られやすいですが、必ずしもあなたのためになるとは限りません。
それには、発言した人の感情や願望も含まれているからです。
そして「あなたのためを思って」というワードは、我々を理屈抜きに縛り付けるための大変便利なツールにもなります。
「あなたのためを思って」という言葉に対する反論(返し方)
「あなたのため」と言われると、相手が自分のことを考えてくれたのだから、従わなければ申し訳ないという罪悪感が生まれます。
返し方としては、まずは真に受けないことが大事です。
相手が思う理想と、あなたが目指す理想は違います。
そして、「あなたのためを思って」という言葉には具体性が欠けていることも見逃してはいけません。
どうしてもマウントを取られるようであれば、このような返答をしましょう。
「あなたの為にと言いますが、では、私の為になる理由を説明してもらっていいですか?」
本当に相手を思っての発言であるならば、具体的なビジョンが存在します。
それを誤魔化されるようであれば、あなたのことを考えていないということです。
あなたのためを思ってと言ってしまう心理
根拠はないけど束縛したい
相手を自分の思い通りにコントロールしたい欲が強いと、それはいずれ束縛となって、従わないとストレスとなります。
人のためを思うのであれば、相手が嫌がっていることを素直に受け止める勇気が必要です。
明確な理由がない場合は、それは単なる強要になってしまいます。
特に、すぐにでも言う事を聞いて欲しい場合は、「なぜ」の部分が省略されてしまいがちです。
自分が優位だと思っている(正当化)
相手にアドバイスする場合、それなりに説得するための知識であったり経験が必要になることもあります。
登山家が山登りをレクチャーする場合、”あなたのために”注意をすることは、あなたの命を守る事にも繋がります。
そのためこのケースは、本当にあなたの事を考えて指導しています。
しかし、普段の日常生活においては、「こういうところを直したほうがいい」というように、あなたの性格や容姿についてさえ改善を求めてくる人がいます。
それが会社のような組織の中で、円滑な人間関係を築くために必要なことであれば、きちんと耳を傾けなければいけませんが、極力ストレートな表現を避けて、アドバイスをしてあげている姿を見せることで、”なるべく相手よりも優位に立ちたい”という個人的な心理が働いている場合もあります。
これが過度になると、「相手を言い負かせたい」、「ねじ伏せたい」と思うようになります。
これが俗にいう”マウンティング”です。
責任を負いたくない
自分の発言には自信はないが、相手をコントロールしたい場合、「あなたのために」という前置きを置くことで、あくまで自分が強要したわけではないというアピールをしつつ相手を束縛することが出来ます。
たとえ、間違ったことを言ったとしても、「あなたのために」を保険にすることで責任を逃れる事が出来るからです。
不満を隠したい
人は、自分の人生に満足していなかったり、日々の生活に充実感がない場合、「あなたのためを思って」という言葉を使ってしまう傾向があります。
これは、置かれている状況から目を背けて、注意を他人に向けることによって、気持ちを紛らわせようとするためです。
権威に酔いしれている
1963年、心理学者スタンレー・ミルグラムによるミルグラム実験によって、権威を得た人間は、他人に対して非人道的行為を犯してしまう傾向に陥るという結果が報告されました。
これは「あなたのために 」という言葉にも通ずるところがあり、自分より立場が弱い人に使うことによって、社会的正義をチラつかせやすくなります。
「あなたのためを思って」という言葉に丸め込まれやすい人
「あなたのためを思って」 と言われやすい人の共通する特徴として、以下の二つが挙げられます。
嫌われたくない願望が強い人
自己肯定感が低い人ほど、嫌われることを恐れ、他人の言動に敏感です。
自分を守るのに必死になることで、行動を他人の意見に合わせる、いわゆる依存体質になります。
人任せ(コントロールされる方が楽)
自分で物事を決めるのが苦手で、相手の指示を待ってしまったり、責任を持つことが嫌、もしくは自己主張が弱い人は、「あなたのためを思って」という言葉を真に受けやすいです。
相手をコントロールしたい人と、決断を人に委ねたい人は、必然的に依存関係になります。
人間関係はとても複雑です。相手とのコミュニケーションによって簡単に亀裂が入ることもあります。
でも、自分が理不尽な扱いを受けていると感じる場合は、相手のペースに飲み込まれないためにも、冷静に対処しましょう。